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ブルセラショップの使用済みパンティはベトナムで職人のオッサンが作っている

 

記事公開日:2011/07/10 20:29 | 最終更新日:2011/07/10 20:29

 『毎日かあさん』の作者である西原理恵子(さいばらりえこ)さんの元夫で、フリーカメラマンだった故・鴨志田穣(かもしだゆたか)さんの本『煮え煮えアジアパー伝』にちょっと面白いことが書いてあります。

 ブルセラショップで販売されている使用済みパンティ、じつはこれを作っているのはベトナムで暮らす職人のオッサンなんだそうです。

 本にはその職人のもとを鴨志田さんが訪れたときのことが書いてあります。

 「じゃあ早くその技見せて下さいよ」
 「よっしゃ待ってろな」
 階下の奥さんに向かって何事かを叫ぶ彼。
 奥さんはライムを輪切りにしたのをいくつか持って上ってきた。
 「さてと! まず用意する物はこのトンカチ。それとライムとヌクマム。このヌクマムは安けりゃ安いほど良し! ひどい臭いのものほど良し。ウヘヘッ、まあ今君が想像している通りの効果だがな」

 机に向かい、まず彼は綿パンツを左側に一山置いた。
「じゃサービスだ、よーく見とけよ」
 おもむろに左手でパンツを一枚手元に引きよせると、銅板をのばしていくかのようにまんべんなくパンツ一面を打ちつけていく。
 それがある程度すむと、今度は股の部分を集中して打ち始めた。
 彼の動きは淀みなく、正確で、リズミカルに響くトンカチの音は二十年の歴史の重みを感じさせた。
 それこそ子供の頃、うっとりと見つめていた卓越した技を持つ大工さんか、畳職人のようであった。
 一枚につき二分とかかっていなかった。
 新品のパンツはみごとに中古になっていた。
 何だか、たれるところはたれ下がり、のびるところはほど良くのび、ゴムひもすら、ゆるんでいた。
 みごとだった。

 でもまだある。
「いつもならこの仕込みは一遍に三十枚はやるんだけれどな、まあ今日はデモンストレーションだからその後の作業を見せてやるよ」
 輪切りにしたライムを股の所にこすりつけた。
 スッと一ぬり。
 大きな霧吹きに入ったヌクマムをさっと一吹き。
 トンカチを手に持ち、ふり下ろしていた時の、すばらしい彼の動きからすると、そのライムとヌクマムの作業に入った途端、少しばかり卑屈になったように見えた。
 急に背中が小さく見えた。
 僕も何だか恥ずかしい物を見ているようで、目をそむけてしまった。
「はいでき上りー! いつ見てもいいできばえだね、全く」
 一枚につき三分かかったかどうか、その気になればかなり量産できるに違いない。
「ほらみてみろよ、このよごれ具合。匂いといい使い古し感といいたまらないだろ、おっといけない、早くプラスチックの容器に入れなくちゃ、鮮度が大事だからね」
 これら彼の作品が日本各地のブルセラショップに並ぶわけである。
 世の男はまんまとだまされていることになる。

 僕の考えを知ってか知らずか彼は語りだした。
「このパンツはさ、ダイヤモンドだよ、古美術さ、もっと言えばカニカマボコさ。イミテーションと言ってしまえばそれまでだろ。でもそれに手を出す奴は皆どこかで納得しているだろ!
 だましてやろうなんて悪意で作ってないさ、俺はな……」
「しかしトンカチとライムとヌクマムじゃあちょっと気の毒な気も……せめて奥さんにはかすとかできないかと……」
「いやそういう製法している業者もいるよ、でもな、これを買いに来る奴は、本当に一番欲しいのは今自分の目の前で女が脱いだのをかぶりたいんだよ。ほかほかのを胸いっぱい嗅ぎたいんだ! わかるか!」
「わかりませーん!」
「君にはその趣味はないかもしれん。しかしだぞ、そのほかほかが叶わない奴らがお金を払って買っていくんだ。その行為がすでに嘘なんだよ、嘘と知ってて喜んでるんだから、それでいいじゃないか。
 だいたいな、日本て国はだめなんだよ。みな一緒にしようと考えすぎるんだよ! いいじゃねえかシミ付きパンツが大好きな男がいたって。やっぱりね俺思うよ。教育だね。教育者がいかんね。
 そもそも島国根性ってのが何も成長させないよ。やっぱりこのままいくと日本って国はだめになるね、本当このまま……」
 彼の独演会は夜中まで続いた。
 使用済みパンティの話から、天下国家に話が移るとは思いもよらなかった。

 (『煮え煮えアジアパー伝』172~174ページより引用)

 まさかあのパンティがベトナムで製造されているとはビックリです。偽物もあるんだろうなあとは思ってましたが、ベトナムでオッサンがライムとヌクマム(魚醤)から作り上げていたとは……。

 『アジアパー伝』シリーズにはそのほかにも面白い話がいっぱい載っているので、興味がある人はぜひ読んでください。

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