デジタルマガジン

2010年05月03日 20:00

“BOOKSCAN”恐怖症に陥る漫画家

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 1冊100円であなたの本を代わりにスキャンしてくれるサービス、“BOOKSCAN”。この画期的なサービスについて漫画家の須賀原洋行氏がブログで異議を唱えているのだが、何度読んでも違和感をぬぐえない。

 この話は「ブックスキャン?何考えてんだ!」、「本のスキャン代行サービス『BOOKSCAN』に漫画家が激怒。でもちょっと勘違いしている?」、「BOOKSCANってそんな立派な業者なの?」と対話を続けているかたちだが、ようやくこの異議に対する答えが出た。

漫画家は“BOOKSCAN”恐怖症に陥っている。

 須賀原氏は、“BOOKSCAN”恐怖症にかかっている。正確には“BOOKSCAN”恐怖症というよりもインターネット上で流通しているマンガをコピーした違法データに対する恐怖なのだが、これを“BOOKSCAN”に押しつけているのだ。

 “BOOKSCAN”恐怖症は漫画家だけではなく海賊版を毛嫌いする一般のユーザーも陥っており、彼らは“BOOKSCAN”のデメリットを「スキャンしたデータがネット上に流される」ことだと主張している。

 違う。“BOOKSCAN”と海賊版ファイルは関係ない。インターネット上に流れている違法データは、“BOOKSCAN”が始まる前から流れていたじゃないか? 漫画家やユーザーは今まで目に見えなかった者への憎しみを“BOOKSCAN”にぶつけているだけだ。それは失礼だろう、ハッキリ言って。

 “BOOKSCAN”は“物”の書籍を“デジタル”のデータへと変換する行為を所有者の代わりに行うサービスだ。そのサービスに対して「データを販売するのだろう?」「データを溜め込み、2冊目は中古書店に売るんだろう?」と言うのは、“BOOKSCAN”の運営者を犯罪者とみなしていなければ出てこない。もう一度言う、それは失礼だと。

わざわざ起業してまで違法ファイルを流すメリットは?

 たしかに、そうした懸念が出てくるのはある意味仕方のないことかもしれない。これだけ違法データが流通していれば、そういった不安を漫画家やユーザーが覚えてしまうのも仕方がない。でも、ちょっとだけ考えて欲しい。儲からないでしょ、そんなことしても。

 1冊100円という低価格に惑わされがちだが、“BOOKSCAN”は合同会社大和印刷が行っているビジネスである。

 仮にこの会社が違法ファイルを売っているとしよう。販売方法は自前のインターネットショッピングサイトを作るか、Yahoo!オークションなどを使うだろう。もちろん価格は本屋に流通している書籍よりも安くなければならない。100円ぐらいなら売れ行きもそこそこ出るはずだ。さて、これ、儲かると思いますか?

 普通に考えればやっていけない。警察に逮捕されるリスクもある。個人がちょっとお小遣い稼ぎ気分でするぐらいならそれでいいかもしれないが、起業してまで(合同会社大和印刷は1円起業だ)することじゃない。

 そんな危険を冒すぐらいなら、素直に会社を大きくした方がいい。運営者は「1日500冊までなら対応できる」と話している。1冊100円の基本料金だけで考えれば1日5万円。22日働けば月商110万円だ。また、運営者は「捌けきれなくなれば人ではなく機械を増やす」とも語っており、この仮定の売り上げはまだまだ伸びることが予想できる。

 警察に捕まる覚悟で違法ファイルを1冊100円で売ることと、より未来のある方法で1冊100円で書籍のデータ変換を代行すること、あなたならどちらを選択するだろうか?

“BOOKSCAN”の正しいメリットとデメリット

 では、“BOOKSCAN”のメリットとデメリットは何だろうか? 考え得る中でいくつかをあげてみよう。

 “BOOKSCAN”のメリット

  • データなので本の持ち運びが簡単になる。容量さえ許せばいくつでも持ち運びが可能に。
  • OCR化(文字をスキャンして文章データに変換する)すれば本の内容を検索できる。
  • 既存の本が埋めているスペースを空けられる。これによりスペースがなくてあまり本を買えないということが解消される。もしくは本棚自体を無くし、ほかのことに有効利用できるようになる。
  • 著者にお金の流れない中古書店への流通が減る。
  • 多くの本を読めるようになり、関連書籍や著者の次回作などを買う動機を生む。

 “BOOKSCAN”のデメリット

  • 裁断されて戻ってこないため、本そのものが物質的になくなる。
  • データが消えると全部パー。
  • 販売会社のフォーマットに縛られた電子書籍が売れなくなる。

 これら以外にメリット、デメリットを思いついた人がいるならコメント欄に書き込んで欲しい。これはあくまで私にとって考え得るメリット、デメリットだからだ。立場や肩書きによっては異なってくるものもあるだろう。

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