デジタルマガジン

2008年04月24日 15:00

JASRACが本当に搾取したもの

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 「1枚3,000円のCDが売れたときのJASRACの取り分」という記事を読んだ。簡潔に記事の内容を説明するが、CDが1枚売れた時にJASRACが得る著作権料は10.8円だとある。「なんだ、JASRACは全然搾取してないじゃないか」と思われそうだが、搾取している。

 金額の面で言うなら、個人が趣味で音楽を配信する場合、10曲ごとに年間1万円が必要になる。1曲でも1万円、10曲でも1万円。さらにアフィリエイトなんて一つでも貼っていたらこれが6万円に跳ね上がる。とても個人に支払える金額ではないし、そもそもペイできない金額だ。

 演奏料にしてもそうだ。百貨店などで音楽を演奏する場合、JASRACだと月に75時間の演奏で年間816,000円かかる。これがアメリカだと月に80時間の演奏で年間$100ですむ。だが、重要なのはそんなことじゃない。

 JASRACが私たちから本当に搾取したもの。それは日本の音楽の未来だ。2001年頃だったか、JASRACが登場したことによりインターネット上のMIDI配信サイトは全滅した。もちろんこれらの配信サイトは個人がそれぞれの楽しみとして公開していたものであり、広告が貼ってあったとしても収入は微々たるものだっただろう。

 そもそも当時はホームページにしてもまだ geocities や cool online 、tripod などの無料のスペースを利用しているような時代だった。現代のように「インターネットで儲けよう」なんて考えている人は少数だった。みんなその曲が好きで、同じ仲間を集めたかった。ここにJASRACは殴りこんできた。

 まだ10代、20代の比較的若いユーザが多かった。私も含めて、彼らにとって10曲年間1万円という金額(5万円という話もあった)は果てしなく大きかった。誰もが無償で30曲、50曲、100曲と打ち込んだMIDIを公開していたからだ。払わずに掲載を続けていたサイトには、容赦なくJASRACから警告メールが送られた。ほどなくして日本におけるMIDI配信サイトは全滅した。

 それから私は音楽から離れた。お金がないからだ。お金がなければ音楽に触れられない時代がやってきたのだ。CDを買うことがなくなり、音楽番組も見なくなった。買ったり見たりすれば欲しいという気持ちが出てきて、そしてまた著作権料という壁にぶつかるからだ。そうして育った今、音楽は私にとってあまり必要のないものになった。

 今や邦楽も洋楽もまったく分からない。別に知りたいとも思わない。インターネットのMIDI配信サイトはクラシックか、もしくは自作だけになった。こんな状態でも若い人たちが自作の曲をアップしていることには熱い気持ちを感じるが、昔に比べて数が少なくなったことは明らかだ。

 日本の音楽業界は衰退している。しかし、JASRACの著作権料は順調に伸びている。どこから取ってきているのか、どこまで取れば気が済むのか。日本から音楽が消えるのは悲しいことだと頭では分かっているが、もう私には昔のような情熱はない。

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